マンション管理組合の監事の役割を少し噛み砕いて示すと、おおむね以下のとおりである。
①管理組合の財産状況の監査を行うこと
②理事の不正や法律違反の有無をチェックするとともに、業務執行の妥当性を監査すること
③監査の結果、不正があると認められるときは、臨時総会を招集すること
④理事会に出席して意見を述べること(ただし、議決権はない)
つまり、監事は、管理組合の業務を執行する機関である理事会(監事は、管理組合の役員ではあるが、理事会を構成する者ではない)について、管理規約や総会での決議した事項に反した運営を行っていないか、独断専行的な運営をしていないか、あるいは、管理費等の不正・不適切な会計処理や使途はないかなど、客観的・第三者的な立場から「監査」を行う役割を担っており、理事会の監督的立場にあるといえる。
前回は、以上の役割を果たすためには幅広い知識が必要ということを記述したが、マンションの居住者がすべからく資質を有する方がとは限らないし、輪番制によって役員を選出する方式の場合は資質とは関係なく監事が選出されることになる。
そのような状況に中で、監事としての責務を果たせなかった場合はどのようなことになるのであろうか。
一般的には、監事は自ら表明した監査意見に対して責任を負うことになる。
例えば、監査を実施した結果、問題がない旨の意見を表明したにもかかわらず、実際には、重大な不正・誤謬があったというような場合には、正当な注意を払って監査を実施しなかったのではないかという点において、監事は管理組合の構成員である区分所有者に対して責任を負うことになろう。
また、管理組合が行った会計報告に基づいて何らかの意思決定を行った管理組合の利害関係者の意思決定を誤らせたことに対しても責任を負うものと考えられる。
そして、監事が故意または過失によって、区分所有者や管理組合に損害を与えたときは、その損害について損害賠償責任を負うことになるであろう。
ちなみに、理事が預かっていた管理費等を不正に流用した場合は、損害賠償などの民事責任だけではなく業務上横領や背任罪等の刑事責任も負うことになるであろう。
一方、管理組合の監事には以下のような問題も指摘されているところである。
①実効性ある監事監査の実現が困難
②公認会計士等の専門家による監査環境が未整備
①は監事の職務を果たすためには、管理組合会計や監査手続などに関する専門知識や理解が必要であるが、マンションに現に居住する組合員のなかに、必ずしもこのような資質を有する方が存在するとは限らない。また、輪番制によって役員を選出する方式の場合は資質とは関係なく監事が選出されてしまう。
また、現在のマンション標準管理規約(単棟型)には「理事及び監事は、○○マンションに現に居住する組合員のうちから、総会で選任する。」(団地型も同旨)と規定されており、これに沿った管理規約を制定しているマンションでは、外部の公認会計士等の専門家を監事に選出することは困難であり、これら外部の専門家等は監事になりえないと解される。
さらに、専門知識を有しない監事のために、業務監査及び会計監査をどのような手続により行なえばよいかという監査基準が明らかではなく、拠りどころとなる指針(マニュアル)も存在していない。しやがって、職務に対する意欲がある組合員にとり環境が整備されていない状況であるといえよう。
②については、現在は、管理組合会計に関しては、企業会計や公益法人会計のように、一般に公正妥当と認められた基準がなく、外部の公認会計士等が監査を実施するに当たり依拠すべき基準がないため、企業会計における財務諸表監査と同じように管理組合の会計報告書全体の信頼性について意見を表明することはできないと考えられる。
ただし、会計報告書全体の信頼性について保証することはできないとしても、現在でも、監事と個々の管理組合との間で、予めどのような点についてチェックするか検討を行い、その結果両者が合意したチェックポイントに関して監査手続を実施し、これにより得られた意見を表明することはできると思われる。つまり、監査そのものではありませんが、限定的な形であれば、管理組合会計基準が存在しない現状においても、公認会計士等により監査手続きではなく、一定の検証手続が実施できると考えられる。
このような問題は理事や監事になって初めて気づくもの。さらに、“縁の下の力持ち”として、見えないところで地道に活動する理事や監事にとって、時間と労力を捧げても、管理業務はうまくいって当然。
真面目に取り組む者ほど、報われない思いが募ることが多いのが現実。このような責任と限界、環境の中で、私がどのように監事業務に取り組んでいったかを今後、機会ある毎に記していこうと思う。
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